「できる理由」から考える思考法 – 個人編

1. 2つの思考法:あなたはどちらから始める?

『これは無理かもしれない…』何かを始める時、ついそう考えてしまうことはありませんか?私たちの思考には大きく分けて2つのスタート地点があります。

  • A:「できない理由」から考える思考
    • 「予算がない」「時間がない」「前例がない」
    • 行動する前にできない壁を探し、思考が停止しがち。
    • 結果:挑戦を諦め、現状維持に留まる。
  • B:「できる理由」から考える思考
    • 「どうすれば予算内でできるか?」「どうすれば時間を確保できるか?」
    • できる方法を探すことから始め、創造性が生まれる。
    • 結果:新たな道が開け、成長につながる。

私は、この思考のうち、後者の「できる理由」から考えるが良いと思っています。

2. なぜ「できる理由」から考えると良いのか?

このポジティブな思考法は、個人とチームに大きなメリットをもたらします。

メリット詳細
① 創造性の発揮「無理」で終わらせず、「どうすれば?」と問うことで、革新的なアイデアや解決策が生まれる。
② モチベーションの向上「できる」という前提が、困難な課題にも粘り強く取り組むエネルギーを生み出す。
③ 圧倒的な自己成長試行錯誤のプロセスそのものが、スキルと経験値を飛躍的に高める。
④ ポジティブな影響力前向きな姿勢は周囲に伝播し、チーム全体の「無理だ」という空気を一変させる。

3. 思考が生む、具体的な行動の違い

思考の出発点は、実際の行動に明確な違いとなって現れます。

局面できる理由から考える人できない理由から考える人
最初の行動まず情報を集め、小さく試すなど、未来に向けた具体的な一歩を踏み出す。まずリスクや障害を列挙し、行動しない理由を固めようとする。
会話の仕方「〜してみよう」「〜なら可能かも」といった、提案型の前向きな言葉を使う。「でも…」「どうせ無理だ」といった、否定的な言葉が多くなる。
失敗した時「次はどう試そう?」と、失敗を学習データとして捉え、次の行動に移る。「ほら、やっぱり無理だった」と、失敗をできない証明として捉え、挑戦を終える。
周囲への影響周囲を巻き込み、「一緒にやろう」という協力的な雰囲気を作る。周囲のモチベーションを下げ、「やっても無駄」という空気を作る。

4. 失敗を恐れる人が、なぜ大きな失敗をするのか?

「できない理由」から考える人は、「失敗したくない」「責任を問われたくない」という気持ちから、無意識に短期的なリスクを避けようとします。しかし皮肉なことに、その姿勢が長期的に見てより深刻な失敗を招きます。

  • 彼らが避けたい「短期的な失敗」
    • 実行した施策がうまくいかない。
    • 周囲から間違いを指摘される。
    • 責任を問われること。 → これらを避けるために「何もしない」という選択をする。
  • 彼らが招いている「長期的な失敗」
    • 機会損失: 挑戦しなかったことで、得られたはずの成功や学びを全て失う。
    • 成長の停止: 新しい経験を積めず、スキルが時代遅れになり、市場価値が下がる。
    • 信頼の喪失: 「あの人は評論家だ」と見なされ、重要な仕事を任されなくなる。

行動しないことは、短期的には安全に見えても、長期的には「取り残される」という最大のリスクを伴う。

5.「できない」を価値ある結論に変えるには

「できない」と言うことが、常に悪いわけではありません。重要なのは、その結論に至るまでのプロセスです。

より具体的に理解できるように、悪い例として思考停止の「できない」、良い例として戦略的な「できない」を書き出しています。

  • 思考停止の「できない」
    • 何も試さず、最初から諦めてしまう状態。
    • これは単なる機会損失でしかない。
  • 戦略的な「できない」
    • 考えうる限りの選択肢を試し、あらゆる可能性を検討し尽くした末の結論。
    • これは「現状のリソースではこれが最善の判断だ」という価値ある戦略的判断となる。

安易な結論ではなく、やり尽くした上での結論こそが、次の成功へとつながる。

まとめ:今日から始める「できる理由」から考える思考

  • 問題に直面したら、まず「どうすればできるか?」と自問自答してみる。
  • 「やれない理由」が浮かんでも、それを「乗り越えるべき課題」と捉え直す。
  • 試行錯誤の末の「できない」という結論は、次の戦略を立てるための貴重なデータである。

この思考法は、単なる精神論ではなく、目標を達成し、道を切り拓くための最も実践的なスキルです。

「できる理由」が解決力を高める ~職場の問題解決とコミュニケーションに役立つ実践スキル~