エンジニアにとって重要な「視野」と「視座」【エンジニアのための7つの視点 第5回】

本記事は「エンジニアのための7つの視点」シリーズの第5回です。これまでに「視点・視野・視座の基本的な理解」「エンジニアにとっての視点」「エンジニアにとっての視野」「エンジニアにとっての視座」について解説してきました。

今回は、特にエンジニアの成長とキャリア形成において重要となる「視野を広げること」と「視座を高めること」に焦点を当て、それぞれの具体的な意味合いを深掘りします。

エンジニアにとって重要な「視野」と「視座」

エンジニアとして成長し、より大きな価値を提供するためには、「視野を広げる」ことと「視座を高める」ことが特に重要です。

「視野が広いとは」

エンジニアにとって「視野が広い」とは、単に多くの技術を知っているということだけではありません。以下の要素が含まれます。

  • 技術領域の幅広さ: 自身の専門領域だけでなく、関連する技術(例: フロントエンド、バックエンド、インフラ、データベース、クラウド、セキュリティ、AIなど)や、開発プロセス全体(要件定義、設計、実装、テスト、運用、保守)に対する理解と関心を持っている。
  • 業界・ビジネスへの理解: 自身が関わるプロダクトやサービスが、どのような業界に属し、どのようなビジネスモデルで成り立っているのか、市場のトレンドや競合の状況はどうなっているのかを把握している。
  • 多様な関係者の理解: ユーザー、顧客、チームメンバー、他部署のメンバー、経営層など、プロジェクトに関わる様々な人々の立場やニーズ、期待を理解しようと努める。
  • 時間軸の広さ: 現在のタスクだけでなく、過去の経緯や将来の展望(技術の進化、市場の変化、プロダクトのライフサイクルなど)まで考慮して物事を考えることができる。
  • 多角的な情報収集力: 技術情報だけでなく、経済、社会、文化など、幅広い分野の情報にアンテナを張り、それらを自身の業務やキャリアに結びつけて考えることができる。

視野が広いエンジニアは、より適切な技術選定ができたり、予期せぬ問題にも柔軟に対応できたり、イノベーションを生み出すきっかけを掴んだりする可能性が高まります。

「視座が高いとは」

エンジニアにとって「視座が高い」とは、物事をより大局的で、長期的、かつ多角的な観点から捉え、判断できる状態を指します。具体的には以下のようなことを意味します。

  • より広い範囲を見渡せる: 目先の課題や自分の担当範囲だけでなく、プロジェクト全体、チーム全体、さらには組織全体や社会全体といった、より広い範囲への影響を考慮できる。エンジニアであれば、自分の書くコードがプロダクト全体、ユーザー、ビジネス、さらには社会にどのような影響を与えるかまで考えられる状態です。
  • より長期的な視点を持つ: 短期的な成果や効率だけでなく、中長期的な持続可能性や将来の発展性まで見据えて判断できる。例えば、一時的に開発が楽な方法よりも、将来のメンテナンス性や拡張性を考慮した設計を選ぶ、といった判断ができます。
  • より根本的なレベルで物事を捉える: 表面的な事象に囚われず、その背後にある本質的な課題や構造、根本的な原因を理解しようとする。「なぜこの問題が起きるのか?」「本当に解決すべき課題は何か?」といった問いを立て、より深いレベルで考察します。
  • 多様な関係者の立場を理解できる: 自分だけの視点ではなく、顧客、チームメンバー、他部署、経営層など、さまざまな関係者の立場や利害を理解し、バランスの取れた判断ができる。
  • より抽象的・理念的なレベルで考える: 単に「どうやるか(How)」だけでなく、「何のためにやるのか(Why)」「何を成し遂げたいのか(What)」といった目的や理念に立ち返って考えることができます。

エンジニアの文脈で言えば、単に技術的に優れているだけでなく、開発するプロダクトが社会にどのような価値を提供するのか(社会的責任を果たす視座)、チーム全体の成長や成果にどう貢献できるか(チームや組織に貢献する視座)、システム全体の将来を見据えた設計ができるか(アーキテクトとしての視座)といったことを考えられる状態が「視座が高い」と言えるでしょう。

「視野の広さ」が知識や情報、認識の範囲を指すのに対し、「視座の高さ」はそれらの情報をどのような立場や価値基準で捉え、判断するかの「質」に関わると言えます。両者は密接に関連し合い、互いに高め合うことで、エンジニアはより大きな課題解決や価値創造に貢献できるようになります。

次回は、「エンジニアの視野と視座による4象限整理」と題し、これらの組み合わせによってエンジニアのタイプをどのように整理できるかを見ていきます。

メタ思考~「頭のいい人」の思考法を身につける

解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法